
夜の街を自転車で巡る男の姿を描いた連作短編集。新聞配達か夜回りか、ヘッドライトで闇を切り裂きながら坂の上から街を見下ろす一場面に、人の営みのすぐ隣にある不穏や哀しみがにじむ。表紙は緻密な線描と彩色で家並み・石段・墓地・植え込みを俯瞰でとらえ、夜空の藍と街灯の橙が静かに溶け合う。タイトルは朱色の手書き風書体で右に縦組み、画面全体を覆うように大きく置かれ、絵の細密さと拮抗する。光と闇のあわいを行き来する物語に、絵と書の余韻が重なる一冊。

著石井玄
装丁西垂水敦+市川さつき+krran
装画ジュン+オソン
KADOKAWA / 2021年
文学・評論