
ひとり出版社「夏葉社」を立ち上げた著者が、就職をあきらめ本をつくることに決めた日からの歩みを綴ったエッセイ。文庫化にあたり二篇を加えた増補版である。表紙は青いドアを大きく開け、廊下で本を読む人物と足元に寄り添う黒猫を線画調のイラストで描く。白地に余白を広くとり、青・赤・紅梅色の小さな差し色がリズムをつくる。タイトルは縦組みの明朝で右に大きく置かれ、左下には本文からの一節が静かに添えられている。日々の入口に立ち、ためらいながらも次の一歩を選んだ人の気配が、装画と余白の呼吸に重ねて伝わってくる。
著松崎有理
装丁アルビレオ
装画上田よう
筑摩書房 / 2017年
文学・評論