
食事の席で交わされる人々のささやきや、聞こえてしまった会話を耳に拾い集めながら綴られたエッセイ集。食卓と耳をめぐる些細な観察を、軽妙な筆致ですくい上げていく。表紙には、長い耳を立てた動物のような人物が皿を前にして座る版画調のイラストが据えられ、皿の中には魚や貝、グラスが描かれる。上下の縁を赤と青の菱形が縁取り、片隅にはゴブレットと髑髏が小さく配置される。墨色の線と赤・青・緑の素朴な刷り色が、聞き耳という密やかな行為と食欲の貪婪さの両面を絵巻のように映し出している。

著碧野圭
装丁岡本歌織
装画げみ
キノブックス / 2018年
文学・評論