
タイトルが示すささやかな羞じらいと、焼きたてのパンが運ぶ健やかさが同居する一冊。コック帽にエプロン姿の女性と、白いTシャツでパンを抱えるもうひとりを中央に据え、バゲットやメロンパン、丸パンが軽やかに周囲を舞うように配された手描きのイラストレーション。淡い陰影と暖色基調の色面が、画面全体に焼き窯のような穏やかな温度を与える。丸みのある黄味の太字タイトルが画面右に大きく置かれ、こんがりと色づいたパンの群れと呼応し、人と食卓のあたたかさをそっと差し出している。
著矢野隆
装丁新潮社装幀室
新潮社 / 2020年
文学・評論