
結婚を機にタイムトラベルめいた時間の揺らぎへ踏み込む長編。吉祥寺、迷い猫、アニメ制作といった現実の手触りを残しながら、過ぎゆく時間と他者との別れを静かに見つめる。表紙では夜空の花火を背に、赤い帽子の女性がブランコを漕ぐ姿が大きな歯車の前に置かれ、紫と青を基調にビビッドなピンクが差し色として効いている。手描き調のタイトル文字は揺れるリズムを伴い、街の輪郭や舞い散る紙片が円環状に配されることで、過去と未来を巡る物語の時計仕掛けが軽やかに可視化されている。

著望月麻衣
装丁bookwall
装画いとうあつき
ポプラ社 / 2023年
文学・評論