
警視庁の「幽霊係」を舞台にした、不可思議な事件と捜査をめぐる物語。手首を縛られ床に座り込む青年の背後に、制服姿の少女が静かに寄り添う構図で、生者と死者の境を曖昧に描き出している。青みを帯びた室内の陰影と散乱した雑多な背景は水彩のにじみで処理され、輪郭線を抑えた人物描写が幻のような気配を漂わせる。タイトルは縦組みで右上に大きく配し、文字には淡い水色の縁取りを重ねて、冷たい光の中に物語が浮かび上がるような表情をつくっている。事件の生々しさと、傍らに立つ存在の透明感。その二つの温度差が、一枚の絵に同居している。

著伊吹亜門
装丁坂野公一
装画水沢そら
小学館 / 2024年
文学・評論