
夏の海辺の町を舞台に、失われた誰かをめぐる記憶と再生を描く青春小説。表紙は水彩で描かれた石段の坂道で、両脇から緑が深く覆い、その奥に並んで歩く二人の後ろ姿が小さく置かれている。段に落ちる木漏れ日のにじみが画面の中ほどを明るませ、視線は自然と上へ、見えない海の方へと導かれていく。右端には鮮やかな朱の縦帯にタイトルを白抜きで通し、緑一色の風景にひと筋の熱を差し込む。光と影、進む足取りと残された景色が、別れの余韻を静かに支えている。

装丁西村弘美
装画鉄雄
KADOKAWA / 2015年
文学・評論