
鮮やかな朱色を背景に、金髪の少女と黒髪の少年が背中合わせに座り、足元には大きな銀色のハサミが突き立つ。少女の黒衣からは断片的なフィルムや写真、CD、本といったモチーフが渦のように流れ出し、青いガラス玉の中には小さな城が浮かぶ。記憶と喪失を巡る角川ホラー文庫の一冊で、朱と黒のコントラスト、細密に描き込まれた漫画的な人物表現、散らばる小物群が、少女の内側に潜む追想の世界をひとつの絵として束ねている。タイトル文字は縦組みで右側に配され、画面全体に物語的な密度を与えている。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論