
社労士として働く2年目の主人公・朝倉雛子が、割り切れない世の中で信念をもって人と向き合う連作短編。仕事と正義のあいだで揺れる若い専門職の姿を、軽やかな筆致ですくい上げる。表紙は鮮やかな黄緑を地にしたイラストレーション。バインダーを抱えた女性を中心に、ツタや桜、車椅子の人物、黒板に向かう子ども、屋台のような風景が有機的につながり、彼女が出会う多様な現場を一枚絵として束ねている。タイトルは手書き調の白い和文で大きく置かれ、帯のピンクが画面を引き締める。柔らかな色面と細やかな描写が、原則と現実のあいだで揺れる主人公の眼差しに重なる。
著多和田葉子、関口裕昭
装丁関口聖司
カバー写真釜谷洋史
文藝春秋 / 2023年
文学・評論