
骨董店を舞台に、店主とその周囲の人物が出会う品物にまつわる謎を解いていく連作ミステリ。古いものに宿る記憶や持ち主の感情が、事件の輪郭を静かに浮かび上がらせていく。淡い黄の地に二人の人物像を立たせた構図で、灰のスリーピースに白手袋とステッキを携えた青年と、白衣に黒手袋を合わせ眼鏡越しに何かを検める青年が対になって配される。タイトルは縦組の明朝で右上に置かれ、左肩には欧文の副題が小さく添えられて品のある古書めいた佇まいを作る。色数を抑えた装画と余白の取り方が、骨董を扱う物語の落ち着いた呼吸そのものを伝えている。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論