
名探偵・蜜柑花子を主人公に据えたミステリシリーズの第三作。アイコンとなった探偵の栄光と孤独を、その内側から問い直す一篇。表紙は旧型セダンの上に佇む人物画を中央に据え、闇のなかに舞う紅い花弁と葉群の散らしを背景に配する。漆黒の地に太く構えた和文の題字、白い上着と緑のマフラー、紅梅色の花弁が夜気のなかで鮮やかなコントラストをつくる。静かな眼差しと過剰なまでの背景装飾の対比から、栄光という言葉の重みが静かに立ち上がる一冊。

著市川哲也
装丁水野哲也
装画荒川眞生
東京創元社 / 2018年
文学・評論