
核戦争のあと、外気から隔てられた小さな谷間にひとり残された少女のもとへ、もうひとりの生存者が訪れる――アメリカの young adult 文学の邦訳。表紙は画面を斜めに分かつ構図で、双眼鏡を提げた白いシャツの少女と、彼女の背後に対置されるふたつの世界――黒い鳥影が舞う暗い空と、樹々の点在する穏やかな緑の谷――を一枚に収める。柔らかな線と抑えた色面のなか、鳥影だけが鋭く黒く落ちて、安息と不穏のあわいに立つ物語の構造を、表紙が静かに告げている。

著市川哲也
装丁水野哲也
装画荒川眞生
東京創元社 / 2018年
文学・評論