
岡本綺堂が編訳した、十九世紀から二十世紀初頭にかけて書かれた西欧の怪奇短篇を集めたアンソロジー。表題作「北極星号の船長」をはじめ、海や異邦を舞台にした幻想譚が並ぶ。淡い黄の地に、コラージュ風の挿画が中央に据えられる。海辺に立つ赤いリボンの少女、傘の影、白い帆をあげた小舟、断片化された風景が紙の質感を残したまま重ねられ、夢と現の境目を思わせる。タイトルは縦組みの明朝で右に大きく、左肩に同色で淡く重ねられた「名作集」が紗のように響く。怪談という主題の翳りを、装丁は明るさのなかに静かに忍ばせている。

著伊吹亜門
装丁坂野公一
装画水沢そら
小学館 / 2024年
文学・評論