
スウェーデンの小さな村で起きた大量殺人事件を発端に、過去と現在、ヨーロッパとアジアを横断していくミステリの上巻。雪に閉ざされた夜、深い藍緑の闇のなかに赤い木造家屋がぽつりと浮かび上がり、街灯の下にひとりの人影が立ち止まる。柔らかな筆致の絵画に白い明朝体の縦組みを重ね、足元には淡く滲んだ「KINESEN」の文字が雪のように沈む。静けさのなかに不穏を孕んだ装画が、遠い土地から運ばれてくる物語の気配をそのまま閉じ込めている。
著太田忠司
装丁緒方修一+東京創元社装幀室
装画松岡潤
東京創元社 / 2020年
文学・評論