
世間が貼ったラベルでは捉えきれない関係を生きる、ある男女の物語。再会した二人がたどる時間を、静かな筆致でたどる長編小説。暗い木目のテーブルに置かれた黒い器、淡いピンクのアイスに苺、銀のスプーン、皺の寄ったレース布——甘やかさと翳りが同じ画面に同居する写真が、表紙の大半を占める。タイトルは白い小さな短冊に縦組みで控えめに収められ、帯の藤色の文字が静かな抵抗のように響く。光と影、甘さと痛みが背中合わせにある物語を、卓上の小さな静物が言葉少なに告げている。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論