
雪の降る夜の路地を、ひとりの少年が立ち止まって見上げている。アスファルトに反射する街灯の橙、暗がりに沈む青、舞い落ちる雪片。寡黙な情景のなかに、誰かを待つような、あるいは何かを見送ったあとのような気配が漂う長編小説。装画はデジタル描写のイラストレーションで、深い藍を基調に赤橙のサインと窓明かりを点描のように散らし、夜の冷たさと心拍のような熱を同時に湛える。タイトルは白の明朝体で天に抜け、降る雪と呼応する。冷えた風景のなかに灯る、小さな体温を封じ込めた一冊。

著伊吹亜門
装丁坂野公一
装画水沢そら
小学館 / 2024年
文学・評論