
ポール・オースターがラジオ番組を通じてアメリカ中から募った、市井の人々による「本当にあった話」のアンソロジー。名もなき語り手たちの記憶や偶然が、編者の手で一冊に束ねられている。表紙上半分には、赤い壁に帽子を掛けた男性の肖像と、緑の枝に佇む黒猫という、無関係に見える二つの絵が並列に配される。柔らかい筆致の手描き挿画が、鮮やかな黄色の地と素朴な書体に支えられ、見知らぬ誰かの暮らしの断片がふと並んで置かれる、この本そのものの構造を映している。

著唯川恵
装丁新潮社装幀室
装画あべちほ
新潮社 / 2015年
文学・評論