
団地で過ごした少年たちのひと夏を描く長編小説。管理人との対決、ひょうたん池の謎、捨て犬騒動――悪ガキたちの世界が、薄紫がかった淡い色面の上に細かな線描で立ち上がる。中央には毛むくじゃらの黒い「魔人」がぬっと現れ、駆け回る子どもらの活気と不気味さを同時に画面へ呼び込む。タイトル文字は白い枠で一字ずつ区切られ、団地の窓並びと呼応して画面に小さなリズムを刻む。郷愁と異物感が同じ画面に同居する装丁が、少年期の記憶のいびつな手触りをそのまま差し出している。
著知念実希人
装丁川谷康久
装画いとうのいぢ
新潮社 / 2020年
文学・評論