
江戸を舞台に、赤い瞳で死者の魂を見通す憑きもの落とし・浮雲が怪異と対峙する心霊奇譚シリーズの一作。表紙は黒い背景に白装束の人物を据え、片手で口元を覆う仕草越しに、こちらを射抜く深紅の双眸が浮かぶ。胸元から落ちる赤い帯と眼の朱だけが画面を貫き、墨に近い陰影とにじむような筆致が和の情緒をまとう。タイトルは縦組みの明朝で右上に大きく置かれ、英字の小さな添えが静けさを引き締める。闇に灯る赤が、人ならざるものを視る者の業をそのまま物語っている。

著伊吹亜門
装丁坂野公一
装画水沢そら
小学館 / 2024年
文学・評論