
初心者ペットシッターが、資産家医師の高層邸宅で出会う不思議な猫をめぐる自叙伝めいた小説。長大なタイトルが内包する奇想を、表紙は静かな密度で受け止めている。白地の中央には、白猫の後ろ姿。その頭部にあたる位置には、赤いリボンで吊られた緑の葉の球体が浮かび、両脇には青い縦縞の柱、足元には赤と青の蕾がひらく。水彩の柔らかな筆致と、縦書きで割られた山吹色のタイトル文字が、現実と幻想のあわいを画面上で同居させる。猫と奇想が地続きにあることを、絵そのものが先取りしている一冊。
著額賀澪
装丁川谷康久
装画三月薫
講談社 / 2021年
文学・評論