
余命を告げられた女性ナスミの死を起点に、家族や友人、かつての恋人たちがそれぞれの「彼女」を語り継いでいく連作短篇。一人の人生が他者の記憶のなかでさざなみのように広がっていく構図が、静かな余韻を残す一冊である。表紙は俯瞰した夜の街並みを油彩風のタッチで描いたイラストレーション。深い藍と黒の空に、窓明かりの黄、看板の赤、坂道に滲む橙が点々と灯り、人の気配だけが残る。タイトルは白の細い明朝、著者名は淡い黄で空に浮かべられ、にぎわいから一歩引いた視点を作る。誰かの夜を遠くから見つめるような装丁が、物語の距離感とよく響き合う。
著BradburyRay、中村融
装丁大倉真一郎
装画ナミサトリ
河出書房新社 / 2024年
文学・評論