
町の鍼灸院を舞台に、訪れる人々が抱える謎を施術とともにほどいていく連作短編。日常に潜む小さな違和感を、鍼と灸の所作で静かに照らし出す物語が並ぶ。カバーは温かな黄褐色を基調にした手描き調のイラストで、ペンダントライトの灯る診療室、白衣の施術者と寝台の患者、籐籠や金属ワゴンといった生活の道具が柔らかな光で包まれている。タイトルは縦組みの明朝で右側に大きく配し、ルビと副題を細く添えることで物語の語り口に通じる落ち着いたリズムを生んでいる。灯の温度が、痛点をほどく手つきとそのまま重なる装い。

著喜友名トト
装丁川谷康久
装画げみ
新潮社 / 2023年
文学・評論