
リアリズムの名手による大人の恋愛と家族小説。かつて山火事のように激しかった恋の熱が失われた今を、静かに描き出す。表紙は手描きのイラストレーション。黄色いセーターの女性と、傍らに立つ大柄な人影、見切れて立つ赤い誰か。中央には乾いた草花の線が走り、白地に細かな点描が降り積もる。下半分を覆う鮮やかなオレンジの上に、手書き風の白文字でタイトルが置かれる。褪せた青灰と鮮烈な橙の対比、ラフな手の痕跡が、過ぎ去った熱とまだ続く日々の温度差をそのまま画面に置き換えている。

著乾緑郎
装丁bookwall
装画嶽まいこ
祥伝社 / 2021年
文学・評論