
ルーマニアの作家による、実在しない都市をめぐる三十六篇の短篇集。建築家でもある著者が、円や方形といった幾何学的形象から都市の生成と崩壊を寓話として描き出す、SFと建築論のあわいに立つ連作である。カバーには、霧の立ちこめる青暗い空のもと、無数の窓を持つ塔状の高層建築がそびえる絵画的なイメージを大胆に配し、白い細身の明朝で和題を、塔に重なる位置に原題のラテン文字を横断させる。幾何の理性と神話の暗がりが同じ画面に同居し、収められた都市群の不穏な静けさを予告する一冊。

著フランシス・ハーディング
装丁大野リサ
装画牧野千穂
東京創元社 / 2023年
文学・評論