
社史編纂室を舞台に、会社という大きな存在を「言葉」で綴り直そうとする働き手の姿を描く長編。ネクタイをゆるめパソコンに向かう人物が、無数の書類に囲まれながら宙に浮くように席に座る一枚絵が表紙を占める。背景はざらりとした生成りのクラフト紙調で、舞い散る紙の白が浮遊感を強める。タイトルは黒の明朝で大きく散らし、中央の「綴」だけを淡い黄で抜いて主題を静かに際立たせる。働くことと書き留めることのあわいを、軽やかさと余白で受け止める装い。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論