
幻想古書店を舞台に、賢者たちが遺した秘密と人々の願いをめぐる物語が綴られる連作。装画は深い緑と金で彩られた吹き抜けの書庫を俯瞰で描き、装飾過多なバルコニーや幾層にも連なる本棚、地球儀、白い胸像といったモチーフを精緻に配置している。手前のバルコニーに立つ黒衣の人物と、階下で言葉を交わす二人の小さな姿が画面に物語の入口を開く。タイトルは白い明朝で縦に置かれ、緻密な室内描写の上に静かに浮かぶ。古書と珈琲の香りが満ちる秘密めいた一室を、そのまま一枚絵として閉じ込めた表紙。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論