
那覇の市場の一角で古本屋を営む書き手による、島で本を売る日々の記録。神保町の大型書店から沖縄へと移り住み、小さな店先に立ち続けるなかで見えてくる土地と本の関係が、増補版として更新されている。表紙は白地に鮮やかな黄色の角丸ブロックを置き、その上に紺色一色の線描で二人の人影と、間に挟まれた本屋らしき建物が描かれる。輪郭だけで人物を示す軽やかな筆致と、足元に散る丸い石畳の点描が、南の路地の空気をやわらかく運ぶ。土地に根ざして本を売るという行為の、地に足のついた明るさがそのまま装画になっている。
著田中小実昌
装丁円と球
装画榎本マリコ
筑摩書房 / 2021年
文学・評論