
イタリア・アルプスを舞台に、都市に生きる男と山に残った友、そして父との記憶を辿る長編小説。少年期から中年に至るまでの友情と、山という土地が人に課す問いを静かに描き出す。表紙は淡い水彩と版画的な筆致による山岳風景で、白い稜線、針葉樹の濃緑、黄に染まる草地、ひと筋の山道とぽつりと佇む山小屋が遠近を作る。タイトルは明朝で上部に控えめに置かれ、原題のラテン文字が画面中央に重ねられる。絵そのものが行きと帰りの距離を語り、装丁は読み手をその道のりに穏やかに招き入れる。

著島田雅彦
装丁新潮社装幀室
装画みっちぇ
新潮社 / 2020年
文学・評論