
眠れない夜の隣にそっと置かれるような短篇集。痛みや喪失を抱えた人々が、それでも誰かのそばに在ろうとする時間を、繊細な筆致で描き出す。表紙は黒を基調にした闇の街を背景に、青いフードを目深にかぶった少女が赤い靴で立つ姿が中央に配される。遠景には橙色の灯が点る家並みが滲むように描かれ、夜の冷たさと小さな温かさが同居する。タイトルは白の明朝でやわらかく抜かれ、深い闇のなかでこちらを見つめる眼差しが、朝までの長い夜の寄り添いを静かに告げている。

著王城夕紀
装丁川谷康久
装画とろっち
新潮社 / 2016年
文学・評論