
もしナチス・ドイツに国家保安局(NSA)のような巨大情報機関が存在し、国民の通信を逐一監視できたら——歴史改変の問いを通じて、現代の監視社会を逆照射する長編の下巻。生成りの紙地を思わせるくすんだクリーム色の地に、赤の二階調で刷られたガスマスクが正面を向き、背後には判読できない書類やタイプ印字、抹消線が薄く重ねられている。タイトルは黒の力強いサンセリフで打ち抜かれ、ドイツ語の副題が古いタイプライター書体で添えられる。文書の断片と防護具という二つの図像が、情報と暴力の絡まりを静かに示している。
著DickPhilipK、大森望
装丁土井宏明
早川書房 / 2020年
文学・評論