
ピンク色の光線に導かれた作家「ホースラヴァー・ファット」が、宇宙を統べる情報生命体ヴァリスの存在を追い求めていく。フィリップ・K・ディック後期の代表作にして、自伝と神学的思弁が交錯する半ば私小説的なSF。黒一色の地に、ワイヤーフレームで構築された二つの頭部が朱赤で並ぶ。片方は線描のみ、片方は面で塗り潰され、同一の人物が分裂していくかのよう。タイトルや著者名を囲う細い罫線も含め、誌面はすべて赤と黒の二色に統御され、計算式のように冷たい構図が、自我の解体という主題と静かに響き合う。
著DickPhilipK、小尾芙佐
装丁土井宏明
早川書房 / 2020年
文学・評論