文学・評論
朝日文庫時代小説アンソロジー 江戸旨いもの尽くし
菊池仁
江戸の市井に生きる人々と料理を題材にした時代小説アンソロジー。鰻の三杯酢や里芋の田楽など、食を介して描かれる人情の機微を、複数の書き手による短編で味わう一冊。表紙は朱赤の地に布のような繊細な織り目を覗かせ、笹に包まれた寿司、徳利、椀物、そして縁に身を寄せる三毛猫の手描きイラストを淡彩で配する。タイトルは堂々たる毛筆書体で縦に置かれ、白い帯のちぎり絵風の意匠が江戸の風情をやわらかく引き立てる。素朴な絵と温かな色面が、頁の向こうの湯気まで運んでくるような装いだ。