
六十を過ぎて糸屋を息子に譲り、隠居の身となった主人公が、ふとしたきっかけで近所の子どもたちの手習い師匠となり、人生の後半をもう一度すごろくのように歩み直していく江戸人情小説。淡い桜色の地に、和装の翁を中心として子どもたちと白い犬が円を描くように配された筆致のイラストが温かい。背景には大きなサイコロが散らされ、振り出しに戻るような軽やかさを示す。タイトル文字は黒の明朝で大きく据えられ、賑やかな絵柄を静かに引き締めている。可愛らしさと落ち着きの均衡が、隠居後にもう一度動き出す物語の気配をそのまま映している。
著相沢沙呼
装丁西村弘美
装画久方綜司
KADOKAWA / 2016年
文学・評論