
深い悲しみの底にいた人が、一匹の猫との出会いを通して生きることの意味を見つめ直していく物語。表紙は白を基調にした余白の広い構図で、前かがみに身を屈めて視線を落とす男性と、尻尾を小さく振りながら見上げる黒猫が向き合う情景が、輪郭線のみのシンプルなイラストレーションで描かれる。色を排した白と黒の対比、そして二者のあいだに残された静かな余白が、声にならない交感のかたちを画面そのものに定着させている。タイトル文字は細い明朝で縦に整然と組まれ、絵の余白と呼応して、悲しみのなかでふと差し込む小さな気配を控えめに浮かび上がらせる。
装丁鈴木成一デザイン室
装画のりたけ
Noritake / 2009年
文学・評論