
絵本の世界に迷い込んでいくような、少女と謎をめぐる幻想譚。三つ編みの少女が宙に浮かぶ書物の上に立ち、背後には洋館の窓、青く透き通る城、舞い散る鳥や蝶、結晶めいたガラス片が渦を巻いて配されている。淡い藤色から夕焼けの橙、深い藍へとグラデーションする背景に、繊細な線画と水彩のような彩色が重なり、ページをひらいた瞬間に立ち上がる飛び出す絵本そのものを思わせる。縦組みの白いタイトルが画面右側を端正に貫き、賑やかな図像と物語の入り口らしい静けさを両立させている。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論