
暮しの手帖』に寄せられた読者の声と編集部の眼差しが交差する随筆集。日々のささやかな情景や、ふと思い出される人や場所をめぐる短い文章が、生活というものの輪郭をやわらかく浮かび上がらせる。表紙は淡い藤色の地に、白と黒の細い線で描かれた手書きのりんごが整然と並ぶ構成。サイズや傾きが少しずつ違う実が反復するなかに、明朝の太いタイトルが落ち着いて据えられ、規則と不揃いのあいだに穏やかなリズムが生まれている。何げない一粒一粒が積み重なって記憶になる――本文の主題が、装丁の佇まいにそのまま重ねられている。

著平野紗季子
装丁大島依提亜
装画Alexis Ralaivao
新潮社 / 2024年
暮らし・健康・子育て