
無差別放火事件の容疑者と目された男が自殺し、その兄が真相を追ううちに「悪はいかに芽吹くのか」という問いに向き合っていく長編ミステリ。表紙は青みを帯びた淡い壁の前に、白いシャツを羽織った人物が顔を伏せて佇む写真を大きく据え、上部には抑揚をもって痩せた明朝で「悪の芽」がのびやかに置かれる。文字の隣に小さく穿たれた黒い円が、静かな画面に異物のような重さを落とす。輪郭の確かな衣服と、像を結びかねる頭部の空白。曖昧さの底からひとつの兆しが立ち上がる気配が、物語の主題と静かに重なる。
著桂望実
装丁高柳雅人
装画Jiwoon Pak
光文社 / 2022年
文学・評論