
アフガニスタンの一族三代をめぐる物語、その上巻。父と幼い兄妹の別離から始まり、引き裂かれた人々の記憶が時代と国境を越えて響き合っていく長編である。カバーには、青と白の絵具で塗り重ねられた雪嶺と、褐色から薄紅へと筆致を残しながら広がる乾いた大地が描かれる。空は淡い黄から水色へと滲み、タイトルの明朝と細い欧文、右上のうぐいす色の小さな「上」が静かに置かれている。荒い絵肌の風景が、遠く隔たった土地で交わされる声のこだまを呼び込んでいる。

著川端裕人
装丁bookwall
装画おとないちあき
早川書房 / 2019年
文学・評論