
架空の王朝・金椛国を舞台にした連作のひとつ、その外伝にあたる長編。本編から少し距離を取り、登場人物たちが過ごしたもうひとつの時間を描き出す一冊である。表紙では、月洞門のような円い枠を背に、卓を挟んで向き合う二人の人物が淡彩で描かれる。藍と碧の滲みが空と水面のように広がり、白地を大きく残した余白に、漆黒の明朝体で組まれた縦書きのタイトルが静かに置かれる。墨と水彩、漢字と余白の呼応が、去来する雲のような物語の気配をそのまま装いに移している。
著松本敏治
装丁原田郁麻
装画早川世詩男
KADOKAWA / 2020年
人文・思想