
石器時代へ跳んだ青年が原始人と恋に落ちる――ネビュラ賞を受けたタイムトラベル長篇の文庫化。深い黒地に明朝の白文字を縦に大きく置き、「時の他に敵なし」の三行が画面を貫く。下半分には小ぶりの惹句が縦組で連なり、左には灰色の矩形がリズミカルに差し込まれて、フィルムの齣送りのような時間の刻みを生む。英題「NO ENEMY BUT TIME」は控えめに添えられ、暗がりに浮かぶ活字の連なりだけで、過去と現在を行き来する物語の静かな緊張が立ち上がる。

著伊吹亜門
装丁坂野公一
装画水沢そら
小学館 / 2024年
文学・評論