
90年代ニューヨーク、老舗文芸エージェンシーに就職した著者が、サリンジャー宛のファンレターを捌きながら書き手としての自分を見出していく回想録。表紙には水彩で描かれた古い石造りのビルと黄色いタクシー、青いワンピースの女性が小さく配される。茶褐色の建物と鮮やかな黄色の対比、にじむような筆致が街の湿度と若い日々の心許なさを同時に映し出す。タイトルは余白を活かした明朝で柔らかく置かれ、ひとりの女性が大きな街に踏み出す瞬間の手触りを、静かな構図に留めている。

著三好愛
装丁中北隆介
柏書房 / 2022年
文学・評論