
大正から昭和初期を思わせる洋館の書斎を舞台に、着物姿の探偵作家とその周囲の人物を描いた連作。沈黙の奥に潜む謎を、静かな筆致で掬い上げる。カバーは深い飴色の木目と臙脂の絨毯、書棚に並ぶ革装の背を背景に、椅子に腰掛けた和装の男と、後ろに立つ二人の人物を緻密なイラストで配する。タイトルは縦組みの明朝で白く抜かれ、副題の旧字「骸惚」が時代の質感を添える。室内の陰影と装画の色温度が、語られぬ言葉の重みをそのまま装丁に映している。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論