
小説を書くとは、迷宮の樹海をさまよう人々を描くこと——文学そのものの危うさと魅力を、森に分け入る者たちの姿を通して綴る長篇。淡い灰緑の地に、立ち枯れた木々と下草の咲き乱れる森が一枚の織物のように描かれ、四隅は房飾りで結ばれた絨毯やタペストリーを思わせる。白い小花を散らした縁取りが図像を額装し、絵物語の挿絵を一枚だけそっと抜き出したような佇まいに。森に踏み入った者は王になれる、けれどその後に殺される——その不穏な予言を、繊細な水彩のタッチが静かに包み込んでいる。

著真梨幸子
装丁新潮社装幀室
装画オートモアイ
新潮社 / 2019年
文学・評論