
明治期の北海道、熊撃ち猟師の生と死を凄絶な筆致で描き出した山岳文学。人と獣が同じ地平で命をやり取りする世界が、骨太な日本語で立ち上がる。漆黒の地に深紅で抜かれた巨大な熊の姿が、版画のような骨太の輪郭で全面に迫り、上空には小さな黒い鳥が一羽。爪のある足裏や肉球が画面の重心を占め、生々しい質感と装飾性を両立させている。白く抜かれた手書き風の題字が、暗い闇に灯る息のように静かに浮かび上がり、物語の獰猛さと荘厳さを一枚で告げる装幀になっている。

著中西智佐乃
装丁新潮社装幀室
装画赤
新潮社 / 2023年
文学・評論