
四季を彩る「七十二候」に導かれ、十二人の作家が春と夏を綴る掌篇集。古来の季節の名前を糸口に、短い物語が連なってゆく。淡い桜色の地に、鶏や草花、輪切りの果実が線描で配され、季節の細やかな気配が画面いっぱいに広がる。中央には縦書きのタイトルがすっと立ち、両脇に作家名が整然と並ぶ。下半分を占める砂色の帯がそこに重みを添え、紙の手触りまで伝えてくる。線の繊細さと色の穏やかさが、季語の持つ涼やかな手ざわりとそのまま響き合う一冊。

著井上ひさし
装丁大岡喜直
装画山下勇三
講談社 / 2014年
文学・評論