
昭和初期に建てられた集合住宅「同潤会代官山アパートメント」を舞台に、そこに暮らした人々の記憶を掬い上げる連作短編集。表紙には、銀杏の落葉が散る階段の前で和装の女性と外套をまとった子ども、そして白い猫が立ち止まる場面が、繊細な線と淡い彩色で描かれる。コンクリートの階段、格子の建具、傍らに咲く椿が、洋と和の混じった往時の暮らしの空気を伝える。タイトルは縦長の水色の短冊に収められ、絵の静けさを破らずに置かれる。一冊の中に時間がそっと畳まれている。
著武田惇志、伊藤亜衣
装丁アルビレオ
装画高妍
毎日新聞出版 / 2022年
ノンフィクション