
衰退に向かいながら長い時間を生き継ぐ人類の姿を、連作の形でたどる長編。遠い未来を描きつつも、どこか神話のように静かな手触りを残す物語が綴られている。白地に黒の細線で起伏する丘や奇妙な構造物、小さな動物が描き込まれ、ところどころに置かれた緑のベタが地形の呼吸を浮かび上がらせる。淡く滲む円が空に浮かび、縦書きの明朝が画面の余白を引き締める。線描の素朴さと俯瞰の構図が、種の長い時間をやわらかく見渡す視線そのものに重なる装丁となっている。

著花村万月
装丁坂野公一+吉田友美
講談社 / 2017年
文学・評論