
アーヴィングからラヴクラフトまで、新大陸の闇に潜む怪異を集めた怪談アンソロジー。鮮烈な赤を地に、闇に沈む森と岩山、こちらを見据える赤い眼の梟が淡彩の挿絵風タッチで描かれる。左上にぽつりと灯る月、輪郭をぼかした夜の質感が、子どもの絵本のような親しみと底冷えするような不穏さを同居させている。題字は黄色の手書き調で縦に流し、版元名だけを下部に小さく据えた構成が、絵の語りに場を譲っている。明るい赤と夜の黒、可愛らしさと禍々しさ──その振れ幅にこそ、アメリカの怪談の独特な手触りが宿る。

著伊吹亜門
装丁坂野公一
装画水沢そら
小学館 / 2024年
文学・評論