
恋愛のかたちと、その輪郭の外側にいる者の感情をすくいとる短編集。誰かを思うこと、思われないことの距離が、淡々とした筆致で綴られる。白い余白を広くとった文庫カバーに、夕暮れの街を見下ろす横顔と、雲が流れる空とが上下二段で並ぶ。風に髪をなびかせる人物の表情は影に沈み、下段の空には小さく陽が落ちかかる。明朝のタイトルが右端を縦に走り、署名のように著者名が左へ置かれる構成が、二枚の写真を一篇の物語のように繋いでいる。見つめる人と、その先にある景色——題に滲む不在を、画面そのものが静かに引き受けている。

著伊吹亜門
装丁坂野公一
装画水沢そら
小学館 / 2024年
文学・評論