
家族として歩きはじめたばかりの三人を描く長編小説。淡い空色を大きく残した画面に、線描で軽やかに起こされた大人ふたりと、その間を歩く小さな子どもが配される。背中にはそれぞれリュックを背負い、足元はひび割れの模様が続く乾いた大地。点在する低い茂みのほかに道しるべはなく、行き先は画面の外に置かれている。タイトル文字は控えめに縦組みされ、絵の余白を妨げない。手探りで踏み出していく関係のはじまりが、この静かな歩みにそのまま重ねられている。

著小野寺史宜
装丁須田杏菜
装画嶽まいこ
小学館 / 2021年
文学・評論